中島淳雄氏
電子部品メーカーエンジニアを経てCADアプリケーションエンジニアに
1997年、2D・3Dのデジタルデザインツールを扱う会社として株式会社アプリクラフト
を設立
3次元曲面モデラーRhinoceros等の日本総代理店として販売・サポートを行う
現在は、デジタルモデリングエキスパートとして、プロダクトデザイン、意匠建築デ
ザイン等のコンサルテーションを行っている
最新刊『コンピュテーショナルモデリング 入門から応用』他、書籍、学会論文多数
3次元デジタルデザインは2次元図面を忠実に再現する目的から、アイディアを具現化するため、2次元図面で表現が困難な、3次元形状を具現化することへ移行してきた。NURBSに代表される、数学表現による形状表現を持つ3次元曲面モデリングツールの普及がこれを可能にした。仮に3次元デジタルデザインの第1世代〜第2世代とする。
”第1世代デジタルデザイン”の普及が進んだ80年代から90年代中頃では、2次元の図面を忠実に3次元化することが行われてきた。 ここで表現されるのは、幾何学的な曲面や2次元自由曲線で、この目的は、デジタル化による生産効率の向上であった。
”第2世代デジタルデザイン” は、アイディアを忠実に、且つモデリングにおいて妥 協しない 3次元自由形状の具現化である。 NURBSに代表されるn次パラメトリック曲線・曲面を扱える3次元デジタルモデリン グツールを使い、より付加価値の高い3次元形状を立体化することが可能になった。これは1990年代の初期から普及が始まり、現在に至っている。
2000年代後半、第3世代とも呼べるデジタルデザイン手法が新しい潮流として出現し、ヨーロッパを中心に、大学や先進的企業で利用されてきた。日本国内においても、まず建築業界において普及が始まり、数年、遅れてプロダクトデザインの分野においても認知されてきている。
“第3世代デジタルデザイン”により、マンパワーでは不可能な大量なデータ処理と自由曲面を含む3次元形状をアルゴリズムにより生成し、パラメーターを操作してシミュレーションを行い、そこから導きだされる形状を思考支援としてデザインの意思決定を行うことが可能になった。
これは従来の発想方法では不可能だったアイディア領域の拡大と効率化といえる。海外ではコンピュテーショナルデザイン、ジェネレーティブデザイン等のキーワードで認知されている。日本においても、コンピュテーショナルデザインのサブセットとしてアルゴリズミックデザインというキーワードで建築分野で普及が進み、アルゴリズムによる思考支援で意思決定が可能な、デジタルデザインの潮流が台頭しつつある。
本講演の目的は、現状における建築デザイン及びプロダクトデザインの分野における第3世代デジタルデザインツールの先進的な使用の実例と、その可能性と有用性、そして今後のさらなる普及のための課題について言及するものである。