現代社会では障害者への社会参加支援が重要視されている. 国内では約428万人が身体障害者手帳を所持しており,視覚障害者は全体の7%となる約31万人存在し,主に点字を用いた支援が実施されている. しかし,視覚障害者379人を対象とした点字識字率調査によると,点字が読めると回答したのは全体の12.7%だった. 視覚障害者への支援として自動販売機には図1のように硬貨投入口や釣銭硬貨口,商品名の表示に点字が記されているが,支援者が傍にいないと商品の購入ができない場合がほとんどである. そこで,点字以外の方法での視覚障害者支援として,音声によってシステムと情報のやり取りを行うインターフェースであるVUI(Voice User Interface)を用いて,利用者が求める商品の位置情報等を確認できるような視覚障害者支援機器の開発を行うこととした. その手法として,図2に示すようなAIスピーカを通じて会話型で対応する飲料用自動販売機の音声案内システムの開発を目指す.
図1 点字貼付の例
図2 会話型音声案内の例
しゃべ郎は主に4つの機器・サービスで構成されている.
図3 しゃべ郎を構成する機器・サービス
本研究では,利用者との会話からより正確に商品の特定が行えるよう,表1に示すように商品を7つ要素に細分化している.
発話から獲得した要素に該当する商品をデータベースから探しだし,該当した商品が2つ以上ある場合は,重複していない要素で絞り込みを行う.
該当する商品が1種類になるまで絞り込み作業を行い,該当する商品が存在しない場合はその旨を利用者に伝える.
7つの要素は以下の通りである.
商品要素 | 商品1 | 商品2 | 商品3 | 商品4 |
---|---|---|---|---|
Category | お茶 | コーヒー | スポーツドリンク | お茶 |
Subcategory | 緑茶 | カフェオレ | ポカリ | 麦茶 |
Temperature | 冷たい | 温かい | 冷たい | 冷たい |
Container | ペットボトル | 缶 | ペットボトル | ペットボトル |
Volume | 550ml | 180ml | 500ml | 650ml |
Cap | 蓋つき | 蓋なし | 蓋つき | 蓋つき |
Name | おーいお茶 | ボス・カフェオレ | ポカリスエット | 健康ミネラル麦茶 |
商品の特定は図4のような手順で行われる.利用者が「冷たいお茶ください」と発言した場合,商品の特定を行うために必要な情報として「冷たい」と「お茶」を発話から獲得する.
次に「冷たい」と「お茶」という情報に合致する商品をデータベースから探し出す.図4に示すデータベースの場合は商品1と商品4が該当している.
さらに絞り込みを行うために,商品1と商品4で重複していない商品要素である「サブカテゴリ」,「容量」,「商品名」を用いて返答文が作成される.
返答文を作成するために用いる商品要素には以下に示すように優先順位を設けている.
カテゴリ→サブカテゴリ→温度→容器→容量→蓋の有無→商品名
図4 商品を特定する流れ
図5 実験で用いた自動販売機
動画1 実験の様子(弱視者女性)
図6 商品購入時間の分布
・ボタンの位置を読上げる際は,最短経路で指示してほしい.
(横に10個取り扱っている自動販売機の場合,左から8番目ではなく右から2番目と案内する)
⇒ 2024年 最短経路指示機能実装!
・「アレクサ,音声案内」と発言しなくてもスキルを使用できないか.
⇒ 2024年 ボタンを押すだけでしゃべ郎を呼び出せる機能を実装!
・「もう一回読上げて」と発言した場合,商品の位置を再度案内してほしい.
⇒ 現在開発中!
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本研究は,AIスピーカを通じて対話型で対応する音声案内システムを開発することによって,支援者が傍にいない状態でも目が見えない視覚障害者が音声情報を頼りに自動販売機で商品を購入できるようにすることを目的とします.
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