湿式供給方法


湿式供給方法とは,アブレシブを水と混合させスラリーとして混合室に砥粒を供給する方法である.
湿式供給装置の詳細を図3.2に示す.

砥粒の供給には混合室内に発生する負圧力を利用する.スラリーの供給量の調節には供給管の管摩
擦損失(圧力損失)を利用した.理論的には式(1)の直管の損失式を用いた.

今,流量をQ,管の断面積をA,流速をvとすると連続の法則より

これを流速vについて解くと以下のようになる.

これを式(1)に代入し,流量Qについて解くと式(4)のようになる.

式(4)において,管摩擦係数λ,重力加速度g,ヘッド内圧力と大気圧によって定まる管の損失ヘッドΔh
は一定であるので,管径d,管長L,を変化させることにより流量Q,つまりスラリー供給量の調節が可能
であることがわかる.ただし,管の断面積が変化する,流れの方向が変化するといった管路の形状変化
による損失は直管の損失に比べ非常に小さいため無視することとする.本実験で用いる装置の場合,供給
量Qが多すぎるため適切な供給量Qまで減少させるには管長Lを長くする,または管径dを小さくすることに
より損失を大きくすることが必要になる.しかしながら,管長Lにより供給量Qの調節を行うと,最適な
供給量Qを得るには,管長Lは大きな値を取らなければならないため装置自体が大型化してしまう.また
大型化することにより,スラリーに空気が混入し安定したアブレシブジェットが得られないという弊害が
発生する.それは圧力が低くなると水に溶解していた空気が遊離してくるためである.温度一定では水に
溶解する空気の質量(溶解度)は圧力に比例するというヘンリーの法則が知られている(式(5),図3.3参照).
cは気体の溶解度,pは気体の圧力,kは気体の種類と温度により決まる定数である.

管内の圧力はアブレシブヘッド内に発生する負圧力により大気圧より低い圧力である.管が長くなると
負圧力下に置かれる水の体積は多くなり当然遊離してくる空気の質量(溶解度)は大きなものとなる.
よって上記の弊害を防ぐために供給管は容積が小さく,且つ摩擦損失(圧力損失)が大きいものでなければ
ならない.そこで管径dを小さくすることで適切な摩擦損失(圧力損失)を得ることにで,管の容積が大きく
なることを抑えた.以上の事柄を踏まえ,実際に使用する管は予備実験により噴流の加工力が最適であった
d=2.5mm,L=1.7mのビニール管に決定した.